星のビジューブローチを巡る
祖母の思い出について
— 惑星ニャーナス物語 —
幼い頃、母に連れられて亡くなった祖母が使っていたという、古いアトリエに行ったことがある。
アトリエには布や糸の他にもレースにリボン、ボタンといった小物までもが所狭しと並んでいた。小さな私の目には見るものすべてが新鮮に映り、まるで宝箱のようだと思ったのを覚えている。
その宝箱のようなアトリエで、古い戸棚の奥に大切そうにしまわれている小さな箱を見つけた。
箱をそうっと開けてみる。
中には銀色の星の形をしたブローチが収まっていた。しっとりと艷やかに光を纏うパール。鈍く瞬くシルバーのビーズは星の輪郭をなぞり、クリスタルガラスは控えめに優しく輝く。
薄暗いアトリエのなか、ブローチの周りだけがぼうっと明るく浮かび上がったように感じた。
「このブローチはなに?」
母に尋ねてみる。
遠い昔、祖母が当時の女王陛下から受け賜ったものだと母は教えてくれた。若い頃の祖母は都でお針子をしており、腕を認められて王室付きの職人として働いていたのだ。
それから数年後、アトリエは知り合いの手に渡りブローチだけが母の手元に残った。その母も数年前にこの世を去り此処にはいない。
持ち主を失ったブローチは、今は私の手元でひっそりと静かに輝いている。